マレーシアに法人設立(会社設立)すると法人税や維持費が安くすむだけでなく、業種によっては法人税の優遇措置があるため、日本と比べて費用が大幅にカットできます。しかし、法人設立の条件や手続きの流れなどが分からず困っている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、マレーシアに法人設立するための条件や費用について分かりやすく解説しています。手続きの流れやマレーシアに法人設立するメリット、設立する際の注意点についても紹介しているので、現地での起業や法人設立を考えている人は失敗しないためにもぜひ最後まで読んでください。
マレーシアで法人設立(会社設立)するには
マレーシアの法人設立では、現地に法人設立をするのか、日本に親会社を持ちマレーシアに支店設立するのかによって資本金などの各種条件も変わります。ただし、マレーシア政府は法人設立を推奨し積極的に税制優遇を行なっているため、支店設立は現実的ではありません。
マレーシアの法人には他に、西マレーシアに位置するラブアン島で起業する「ラブアン法人」の形態がありますが、ラブアン法人はマレーシア本土でのビジネスはできません。そのため、マレーシアを含む国内外の事業にはマレーシア法人が最適です。
マレーシアに法人設立するための条件
マレーシア法人を設立するための条件には、業種によって外資の比率や最低資本金額が定められています。
マレーシア人や国内の資源を守るための「ブミプトラ政策」に基づき、外国企業の参入を制限しているのが外資規制です。しかし近年は規制が緩和され、製造業は100%外資参入が認められるなど、マレーシアでの起業はしやすくなっています。
<マレーシア法人の業種別外資規制>
業種 | 外資規制 | |
製造業 | 100%外資可能 | |
金融機関 | 外資規制なし
※5%以上の株式を取得する場合は、マレーシア中央銀行の事前承認が必要 |
|
その他流通・サービス業等 | 外資規制なし
|
|
外資規制あり
|
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参入不可の業種
|
最低資本金額は展開する事業や許認可によって変わります。
<マレーシア法人の最低払込資本金額>
業種 | 最低払込資本金額 |
製造業部門 | 250万RM(約7,500万円) |
非製造業部門 | 100万RM(約3,000万円) |
プリンシパル・ハブ会社 | 250万RM(約7,500万円) |
就労ビザ申請企業 |
|
(1RM/30円換算)
マレーシアの法人設立でかかる費用
マレーシアの法人設立でかかる費用は、設立時にかかる設立費用と法人設立後の会社を維持するために必要な維持費用です。
マレーシアの法人ではカンパニーセクレタリーという専属の会社秘書役を選任する義務があるため、カンパニーセクレタリーの給料などの費用は設立後も継続して発生します。
設立費用
- 設立手続き:2万RM(約60万円)〜
- 最低払込資本金(100%外資の場合):50万RM(約1,500万円)〜
(1RM/30円換算)
マレーシア会社法では最低払込資本金が1RM(約30円)とされていますが、実際は法人の就労ビザを取得するために業種ごとに定められた最低資本金額が必要です。
維持費用
- カンパニーセクレタリー費用:1,000RM(約3万円)〜
- 会計監査費用:5,000RM(約15万円)〜
- 税務費用:3,000RM(約9万円)〜
- 帳簿関連費用:10,000RM(約30万円)〜
合計18,000RM(約54万円)〜
[jin_icon_checkcircle color=”#ffd700″ size=”18px”]その他事務所の家賃や光熱費等の固定費は事業規模による
(1RM/30円換算)
上記の金額はあくまでも概算であり、依頼する会社が現地企業か日系企業かによっても大幅に変動します。
マレーシアの法人設立で必要なビザ
マレーシアで法人設立をしてビジネスをするためには、就労ビザが必要です。ただし、マレーシアでは個人事業主は就労ビザが取得できないため、法人設立をしたあとに就労ビザ申請をします。
就労ビザの申請には早くても半年程度かかるので、法人設立後すぐにビジネスを始めたい人は、事前に流れを把握してスムーズに申請手続きを進められるようにしておきましょう。
マレーシア法人設立の手続き10ステップ
マレーシアで法人設立するためには、秘書役の選任や就労ビザの取得など複雑なステップがあります。
ここでは、マレーシアに法人設立をする際の手続き10ステップを分かりやすく解説します。
マレーシア法人設立の手続き10ステップ
- カンパニーセクレタリーの選任
- 会社名の決定(ネームサーチ)
- 発起人(取締役)・株主の決定
- 定款の作成
- 会社設立申請
- 銀行口座の開設と資本金の用意
- 就労枠の承認と就労ビザの取得
- 第一回取締役会
- ビジネスライセンスの取得
- 第一回株主総会
1.カンパニーセクレタリーの選任
マレーシアに法人設立する際には、はじめにカンパニーセクレタリーという会社の諸手続きを専任で行なう会社秘書役を選任します。
カンパニーセクレタリーの選任には資格保持者などの条件があります。また、選任する際には会社情報を提示するための書類が必要です。
<カンパニーセクレタリーの条件>
設置条件 | マレーシア国内の会社には必ず1人以上の設置義務あり |
選出条件 | マレーシアに居住する18歳以上の国家資格保持者
かつ以下のいずれかを満たす者
|
選任・解任 | 取締役会の決議において決定 |
カンパニーセクレタリー(会社秘書役)選任に必要な会社情報
- 発起人の英語フルネームおよびパスポート写真ページコピー
- ネームサーチ用会社名の候補3つ
- 居住取締役の氏名、住所、携帯電話番号、パスポートコピー
- 株主の氏名、持株数、資本金額、パスポートコピー
- 株主、取締役の住所証明書類
- 営業所の住所・電話番号
- 定款に記載する事業
- 開設予定の銀行・支店名
- サイン権のルール
- 事業年度末日
2.会社名の決定(ネームサーチ)
マレーシアの法人で使用する会社名の候補を最低3つあげ、マレーシア会社登記所(CCM/マレーシア語ではSSM)から使用許可を得ます。
マレーシアでつけられる会社名のルールは厳しく、使用できない文言や「SDN.」などの略称をつける場所などこまかく規定があります。CCMによってふさわしくないとされた場合は再申請が必要となり、新たに費用も必要です。
以下はマレーシアの会社名決定の際の留意点です。
- 公開会社「BHD.」、非公開会社「SDN.BHD.」の略称は末尾につける
- 同じ名前の会社がすでにある場合は不可
- 「Royal」「King」などの王室に関連する文言および「Federal」「State」などの国や地方自治体との関連を持たせた名前は大臣の許可が必要
申請はカンパニーセクレタリーを通じてオンラインで行ない、数日のうちに結果が出るでしょう。社名の使用許可は30日間有効で、この期間中に法人の設立申請を行なう必要があります。
3.発起人(取締役)・株主の決定
マレーシア法人では、最低1名の取締役と株主を決めます。以前の会社法では取締役は2名とされていましたが、2017年に施行された新会社法では1名でよいとされました。取締役と株主は兼任でき、マレーシアに居住している人であればマレーシア人でなくても就任可能です。
4.定款の作成
マレーシア法人の定款は2種類あり、それぞれの頭文字をとってM&Aと呼ばれます。基本定款には会社の基本的な情報を、付属定款には運営規約等を記載します。
[jin_icon_checkcircle color=”#ffd700″ size=”18px”]基本定款(Memorandum of Association)の主な記載事項
- 社名
- 登記住所
- 設立目的
- 会社権限
- 株主の有限責任
- 授権資本・株式数
- 会社権限など
[jin_icon_checkcircle color=”#ffd700″ size=”18px”]付属定款(Articles of Association)の主な記載事項
- 株主総会関連
- 株式関連
- 取締役関連
- 内部自治規則
- 会計関連など
5.会社設立申請
設立申請はカンパニーセクレタリーがオンラインで行ないます。費用1,000RM(約3万円)とともにマレーシア会社登記所(CCM/マレーシア語ではSSM)に申請し、数日で会社登記が完了します。
会社設立申請の提出書類
- 商号認可書
- 取締役・発起人・カンパニーセクレタリーの法定宣誓書
- 定款
- 日本で公証された英語の定款
6.銀行口座の開設と資本金の払い込み
法人設立が許可されたら銀行口座を開設し、業種によって定められている最低資本金額を目安に資本金を振り込みます。
7.就労枠の認可と就労ビザの取得
法人で行なうビジネスの業種によって、以下の各関係省庁に就労枠の認可を得ます。また、法人で働くための就労ビザの取得も必要です。
就労枠の業種別申請先
- 製造業:マレーシア開発庁で永久または期限付き認可を取得する
- 非製造業:国内産業庁で卸小売貿易委員会の承認を得る
8.第一回取締役会
会社設立申請が許可されたら1ヶ月以内に取締役会を開きます。実際に集まる必要はなく、カンパニーセクレタリーによって用意された書類にサインをして終わる場合がほとんどです。
取締役会では取締役やカンパニーセクレタリーの任命など、法人の運営に関わる事項を決定します。
9.ビジネスライセンス(営業所ライセンス)の取得
事業所や店舗でビジネスを行なうためにはビジネスライセンス(営業所ライセンス)が必要です。場所に対して許可を得るもので、手続きはカンパニーセクレタリーを通して最寄りの市役所で行ないます。
ライセンス取得の書類には英語や日本語は使用できず、マレーシア語のみで作成します。有効期限は1年で、毎年更新が必要です。
10.第一回株主総会
1回目の株主総会は、法人を設立してから18ヶ月以内に開催する義務があります。ただし、株主数50名以下などの規定を満たす非公開株式会社(SDN.)は各年の株主総会を省くことが可能です。
[jin_icon_checkcircle color=”#dcdcdc” size=”18px”]非公開会社(SDN.)とは
- 株主数50名以下
- 株式の譲渡制限
- 株式、社債の一般公募不可
[jin_icon_checkcircle color=”#dcdcdc” size=”18px”]非公開会社以外が公開会社(SDN.BHD.)となる
マレーシアに法人設立するメリット・デメリット
マレーシアに法人を設立する際には、多くのメリットだけでなくデメリットも事前に把握してリスクに備えておきましょう。
ここでは、マレーシアに法人を設立する際のメリット・デメリットを紹介します。
マレーシアに法人設立するメリット
マレーシアで法人を設立すると、コストカットや法人税の優遇措置など日本で法人を設立した時と比べてメリットが多くあります。
ここでは、マレーシアに法人設立するメリットを解説します。
マレーシアに法人設立するメリット
- 外資100%で設立できる
- ビジネスコストがかからない
- 法人税が安い
- 法人税の優遇措置がある
- 経済成長が見込まれる
- 居住環境が良い
外資100%で設立できる
マレーシアでは2019年に規制緩和が行なわれ、一部をのぞく製造業や流通・サービス業では100%外資が認められています。政府による積極的な外資企業の誘致は今後も続く見通しで、経済成長の活発なマレーシア国内でビジネスをするメリットはさらに大きくなるでしょう。
ビジネスコストがかからない
マレーシアでビジネスを行なうと日本より大幅にビジネスコストを削減できます。現地人の採用で人件費が抑えられるだけでなく、クアラルンプールでは東京より1/2の賃料で事務所を借りられるなど、継続的なコストカットが可能です。
法人税が安い
前提として現地で事業の管理や会議などを行なっている場合には、居住者としてマレーシアで課税されます。マレーシアの法人税は所得によって税率が変わりますが、課税所得が15万RM(約450万円)以下の法人は15%です。
日本で法人を設立すると、法人の利益に関連する5種類の税の合計が実質的な法人税となります。住民税や事業税のないマレーシアで起業すれば、費用面においても大きなメリットがあるでしょう。
日本 | マレーシア | |
法人が負担する主な税金 |
|
|
税率 |
|
|
法人税の優遇措置がある
マレーシアの法人には法人税の優遇措置があり、事業や事業計画によっては所得の70%を免税可能です。
優遇措置の種類 | パイオニアステータス | ITA(投資税額控除) | RA(再投資控除) |
対象企業 | 22種からなるMIDA指定の推奨事業、推奨製品を製造している (例:農業製品、化学製品、金属製品、家庭用品等) |
左記同様 | 操業後36ヶ月経過した事業の拡大や自動化等のために資本的支出が発生した企業 |
優遇措置 | 法人税の70%を5年間免除 | 資本的支出の60%控除 (パイオニアステータスのどちらか一方を選択) |
資本的支出の60%控除 |
パイオニアステータスとITAは同時に申請できず、どちらか一方の適用となります。上記の優遇措置は一部であり、マレーシアの優遇措置を受けるためには起算日や事業内容等にこまかく規定があるため、最新の制度についてはよく確認しましょう。
経済成長が見込まれる
マレーシアは労働力のある若年層の人口が増加し、安定した経済成長が見込まれる国です。消費税や住民税がなく、外資の参入を積極的に行なうなど東南アジアのなかでもビジネスを展開しやすいため、マレーシアで事業を行なうメリットは大きいでしょう。
居住環境が良い
マレーシアは治安が良く日本に対して好意的な、日本人がビジネスをする国としては最適な環境です。マレーシアに住居を持つ場合も東京などの都心部と比べて2/3以下の家賃で高層階のコンドミニアムに住めます。
日本製の日用品や日本語対応の病院など、日本人が生活するうえで居住環境が整っているマレーシアは移住する日本人も多く、ビジネスチャンスにも恵まれています。
マレーシアに法人設立するデメリット
マレーシアでは制度や習慣の違いによるデメリットによって現地での起業に影響が出る場合があります。
ここでは、マレーシアに法人設立するデメリットを解説します。
マレーシアに法人設立するデメリット
- ブミプトラ政策の規制がある
- 現地人との習慣の違いがある
ブミプトラ政策の規制がある
マレーシアでは、自国の人的・環境的資源を守るための「ブミプトラ政策」でマレーシア人の地位向上や経済格差を解消する動きがあります。
近年は少なくなってきましたが、現地で法人を設立する際には外資規制やマレーシア人の雇用の優遇などで影響を受ける場合もあるでしょう。
現地人との習慣の違いがある
マレーシアは日本人にとって住みやすい国ですが、現地の人や文化の習慣の違いに留意して事業を行なう必要があります。
代表的なマレーシアと日本の習慣の違い
- イスラム教の習慣が生活に根付いている(礼拝・ハラール認証など)
- 合わないと思ったら転職が当たり前
- 個人の都合で遅刻・欠勤する
マレーシアで継続して事業を行なうためには、宗教への理解や現地の国民性に対する柔軟な姿勢が重要といえるでしょう。
マレーシアに法人設立する際の注意点
マレーシアに法人設立するには日本とは違う納税方法の知識やビザ取得までのスケジュールなど、さまざまな点に注意が必要です。
マレーシアの会社設立に失敗しないためにも、以下に紹介する注意点を読んで事前に把握しておきましょう。
マレーシアに法人設立する際の注意点
- 所得でも課税対象になる
- 納税手続きが日本と違う
- 設立からビザ取得までに時間がかかる
- 先に取締役の住居が必要
国外所得でも課税対象になる
以前のマレーシアでは国外を源泉とした所得には課税されていませんでした。しかし、2022年の税制改正によって国外源泉の所得でもマレーシア国内で受け取った場合には課税されるようになりました。
ただし、会社やLLP(有限責任パートナーシップ事業)は内国歳入庁が定める要件を満たせば2026年末まで非課税とされています。経済状況などにより税制は頻繁に変更されるので、最新の情報を確認しましょう。
納税手続きが日本と違う
マレーシアの納税手続きは、納税予定額を法人側が計算して申告・納税する自己申告納税制度です。会社の事業年度(決算期)から7ヶ月以内に申告し、毎月15日までの分割納付が義務となっています。
分割納付で納めすぎた税金は還付されますが、不足分が確定法人税額を30%超下回った場合には不足額の10%を罰金として徴収されるので、納税手続きは慎重に行ないましょう。
設立からビザ取得までに時間がかかる
マレーシアで法人を設立してから現地で働くための就労ビザを取得するまでには、およそ1年ほどかかります。用意する書類には日本の公証が必要だったり英語版を用意しなくてはいけなかったりと手続きが複雑です。
また、就労ビザは登記所(CCM/マレーシア語ではSSM)に法人設立の許可を得てからでないと申請できません。現地の企業をサポートする代行業者に依頼すると、費用はかかりますがその分時間と手間が省けるでしょう。
先に取締役の住居が必要
マレーシアで会社の登記申請をする際には、取締役が居住するマレーシア国内の住所の情報が必要です。マレーシア国内に賃貸物件を借りるには、現地の不動産オーナーとのやり取りや内見・契約などさまざまな手続きが発生します。
現地人との交渉や契約書の締結は個人で行なうには複雑なので、現地に拠点があり、実績や知識の豊富な不動産代行会社に依頼しましょう。
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安定した経済成長が見込まれるマレーシアで法人設立をすると、日本に比べて安い費用で起業できるだけでなく、法人税の優遇措置など多くのメリットがあります。しかし、日本と違う納税方法や設立申請より前に取締役の現地住所が必要など、知っておきたい注意点もあります。
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